前回は、不確実な時代を乗り越え、新規事業を創出するために「AI×デザイン思考」がなぜ有効なのか、その全体像についてお話ししました。すべての出発点は、漠然とした課題を具体的な「解くべき問い」に変換することです。
今回は、そのための第一歩として、自社の内側(インサイド)にある課題や強みから発想する「インサイトアウト発想」と、それをAIと共にどう深めていくのかについて解説します。この考え方は、日本総合研究所の『新たな事業機会を見つける「未来洞察」の教科書』などでも、未来を構想する上での重要な起点として述べられています。
アイデアを磨き上げる「4つのプロセス」の旅
上の図は、デザイン思考の基本的なプロセスを示したものです。調査・検証(Research)から得た情報を抽象化(Analysis)し、それらを統合(Synthesis)して新たなコンセプトを生み出し、可能性創出(Prototype)のために形にする。この4つのプロセスを何度も循環させながら、アイデアを磨き上げていきます。
この旅の出発点となるのが、自社が今どこにいて、どこへ向かおうとしているのかを正確に把握すること、すなわち「事業課題」の定義です。
AIと共に「事業課題」を言語化する
私が講座で用いる「事業課題設定フレームワーク」は、この「インサイトアウト発想」を構造化するためのツールです。
- 挑戦するのは、誰か?
- 今、どんな壁にぶつかっているのか?(これまで)
- どうすれば、その壁を乗り越えられるか?(これから)
- その挑戦を阻むものは、何か?
これらのシンプルな問いに対する答えを、経営者やチームメンバーが思いつくままに書き出します。そして、その言語化された課題意識を起点としてAIとの対話を行うことで、AIは混沌とした言葉の断片を整理し、論理的な構造を持つ「事業課題」として再構築する手助けをしてくれます。このプロセスは、組織内の課題認識を統一し、進むべき方向性を明確にする上で、極めて有効です。
「インサイトアウト発想」の光と影
自社の強みや直面する課題から出発する「インサイトアウト発想」は、現実的で実行可能性の高いアイデアを生みやすいという利点があります。つまり、現在地から未来へと向かう「想定内(線形)の未来」を描くアプローチです。これは、既存事業の改善や、着実な成長を目指す上で非常に重要です。
しかし、この発想だけでは、業界の常識や過去の成功体験という「見えない枠」から抜け出すことは困難です。市場のルールそのものを変えてしまうような、革新的なアイデアにはなかなかたどり着けません。
では、どうすればこの「枠」を突破できるのでしょうか。それには、会社の外、つまり社会全体の大きな変化から未来を構想する「アウトサイドイン発想」が必要不可欠となります。
次回は、この「アウトサイドイン発想」を実践するための具体的な手法として、AIを活用した「未来の兆し」の捉え方について、詳しく解説していきます。
(Vol.21へ続く)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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