サプライチェーンマネージメント(2)~保管スペースが足りない!~

海外事業の教科書

前回は各部署の成熟度が高まってくると、全体最適から個別最適に陥りやすくなるメカニズムを解説するために、営業部、製造部、調達部の与件情報を以下の通り整理しました。

営業は、付加価値品を計画通りに販売できていないが、汎用品で帳尻を合わせ、数量目標は予算を達成。

製造は、営業の直近の販売状況を鑑み、調達に当初予算に基づく調達計画の修正依頼済み。

調達は、製造からの依頼を受け調達計画の修正に入ったが、原料輸入のリードタイムがあることから結果が出てくるのは3~4か月後であることが気になっている。

このような状態で何が起こるのか説明していきます。

保管スペースがない!

調達計画を修正したものの、結果が出てくるのは3~4か月後であるため、1か月もしないうちに、付加価値品用原料の在庫量が想定通り減らなかったことから、次から次に入ってくる汎用品原料の保管スペースが不足。原料はバルク(掲載写真のような個別包装されていないむき出しの原料)であり、同一スペースに異なる原料を保管することはできない。少しでも他の原料が残っていると、混ぜて保管できないため、デッドスペースが発生してしまう。

製造は、付加価値品原料を消化し保管スペースを確保するため、付加価値品の見込生産を開始するものの、想定通りに売れず製品在庫の山となっている。この措置によって、次から次に入ってくる汎用品原料の保管スペースを多少は確保したものの、それでも付加価値品用の原料全てを使い切ることは難しく、デッドスペースの恒常的発生を防ぐことができていない

製造は汎用品の製品在庫も見込生産で積み増そうとしたが、付加価値品の製品在庫で製品保管スペースを既に食ってしまい(包装されているので同一スペースに保管可能ではあるが)、それも十分にできず。ついに、自社保管スペースが満杯となり、外部の倉庫と契約することに。

外部倉庫は自社工場から離れている上、スポット契約ということで、かなりの高額で契約せざるを得なくなってしまった。物流費も余計にかかっている。

営業は良かれと思って、汎用品の販売を増やして付加価値品の予算未達の穴埋めをしようとしたが、その増加分の限界利益以上に、保管料と物流費がかさんでしまい本末転倒な状態に。

生産から汎用品の販売を減らすように営業に働きかけるも、営業は「何とか押し込んで契約したのに、それを自ら引っ込めると顧客からの信用を失ってしまうし、競合を利するだけ。」と協力姿勢を示さない。その代わり、付加価値品の販売に力を入れることを再度約束するも、結果が伴わず、生産と営業の関係が険悪に。

生産は、ダメモトで調達に船積みを遅らせることを依頼。調達は、beyond controlであり対応は難しいと回答。辛うじて、到着後の貨物引取を、追加チャージされるギリギリの期限まで遅らせたが焼石に水。

生産は「こうなることがわかっていたからこそ、1か月前から調達計画の修正等で対応するようにお願いしていたのに事態が改善していない」とを調達に不満を示すと、調達は「輸入原料のリードタイムを考慮すると、そもそも対応は無理。」と反論。

結果、「営業が計画通りに販売できないことが問題」と全ての矛先が営業に向かうことに。営業は「競合他社との競争や、自社ブランドの認知度。付加価値品の価格帯が高いことによる売りにくさ」を説明しつつ、さらに「競合製品を圧倒するほどの製品を、競争力ある価格帯で作れていない製造・調達にも問題はある。」と反論し、社内の雰囲気は最悪の状態に。。。

解決策はるのか?

上記の通り、営業、製造、調達は、決して手を抜いてきたわけではないのに、かつ、事業立ち上げ当初の市場浸透が上手くいき、事業が軌道に乗っているがゆえに、創業以来最悪の事態に陥ってしまいました。いくら売っても、作っても、ムダな保管料で利益が食われてしまうというのに、対処方法が見いだせず路頭に迷ってしまったのです。

この事態を打開するにはどうしたらよいのでしょうか?

まずは問題の整理から入っていきます。

問題整理

・営業

付加価値品の数量目標が達成できず、その穴埋めを汎用品の販売増で補ってしまった。かつ、付加価値品の数量を速やかに増やすことが難しい市場環境にある。

・製造

営業の販売状況が計画とズレてきていたことは認識しているものの、それをタイムリーに調達には伝えてはいなかった。初期段階では目の前に原料があるのでその消化で対応していたからだ。とはいえ、汎用品用の原料に偏った消化だったので、しばらくすると汎用品の原料が不足する事態となり、国内の問屋等からスポットで不足分を調達ししのいできた。但し、付加価値品用の原料の在庫が減らないことと、汎用品用の原料の不足を補うために調達数量を増やしたことで、保管スペースが不足する事態に陥ったのだが、その予測は十分にできていなかった

・調達

年初に作成した調達計画に基づいて調達しており、製造からの依頼に基づき上記のスポット買いを実施した。保管スペースが不足するというのは想定外。そもそも、本件は、輸入のリードタイム(3カ月)という制約条件があり、beyond controlという意識が強い。年初の調達計画と実態が違ってきていることは認識しているが、どのように計画を変更して良いかわからないし、必要数量を決めるのは製造の仕事という思考が強い。

次回以降、解決策について深掘りしていきます。

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