ヒト・モノ・カネのヒトへの投資の話をしていきたいと思います。人的資源投資が重要であることは言うまでもないでしょう。会社はヒトで成り立っている。そしてその重要性は、会社設立や工場建設といったハコ(モノ・カネ)から入るグリーンフィールド事業の経営を担うことになれば、否が応でも痛感することになります。
一方で、日本的雇用慣行に慣れている私たちにとって、ジョブホッピングが当たり前の国での人的資源投資というのは、よくよく考えなければならない深いテーマだと思います。語弊を恐れず申し上げると、直ぐ辞めてしまうかもしれない人たちに、人的資源投資を惜しみなく注げるかということを熟考する必要があるということです。
それでも人材育成は大切
上記で提示させて頂いたテーマに対する当方の答えは「それでも人材育成は大切」ということです。但し、終身雇用的発想、即ち、超長期で人材育成を行うことは間尺に合わないのではないでしょうか。もっと短いスパンで人材育成メニューを策定してく必要があると思います。端的には即戦力化のための人材育成が主軸になるでしょう。但し、その発想だけでは社員にとって魅力ある人材育成メニューとはなりにくい面もあります。それはどいうことでしょうか。
「この会社に入ってよかった」と思ってもらえるような人材育成策へ
ジョブホッピングが当たり前の国というのは、基本的には売り手市場です。採用計画通りに採用することが難しい市場であり、入社してくれること自体、経営陣としてはありがたいことであり、その決定を下してくれた社員に報いるための人材育成策ということを念頭に置く必要があるということが、日本的雇用慣行の下での人材育成策との思想的な違いなのかもしれません。
「この会社に入ってよかった」と思ってもらえるような人材育成策とはどのようなものを指すのでしょうか。筆者の考えは、社員の成長意欲に応える施策であると考えています。
成長意欲に応える
ジョブホッピングが当たり前の国でかつ売り手市場ということは、成長著しい新興国の特徴でもあります。そういった国に進出するとわかることですが、人口の平均年齢は30歳前後と若く、人々の多くが、昔より今の方がよくなっているし、今より未来はもっとよくなると当たり前のように考えています。日本の高度成長期と同じような状況と言えるのではないでしょうか。そういった国の若い人たちは、もっと豊かになりたいという意欲に溢れている傾向が強いと思います。
まさにそういうマインドをもった社員に応えられる人材育成メニューを、会社としてラインアップしていけるかがポイントだと思います。
ある意味、従業員満足度を高めるための福利厚生策的な一面もあるのではないかと思います。人材繋ぎ止め策といっても過言ではないでしょう。
企業がヒトに投資してそのヒトがその育成策に基づき成長し、後年、投資に見合うリターンを返すというのが日本的雇用慣行の人材育成策の本質とするならば、海外、とりわけジョブホッピングが当たり前の売り手市場では、そのリターンは、その社員が在籍している間に必ずしも期待できない。その前に辞めてしまうかもしれない中で、「この会社で働けてよかった」と思ってもらえるための従業員満足度向上策の一つ、言わば、定着率向上のための人材育成策が有効である、ということだと思います。
具体的な人材育成策
以下、有効と思われる人材育成策をあげせて頂きます。社員にどういった育成策を希望するかアンケートをとる方法もあるでしょう。
・日本あるいは事業パートナーの本国における研修(工場見学、海外スタッフ向けワークショップ等)
・社員旅行を兼ねた泊まり込みの研修(事業カイゼン案コンテストやチームビルディング研修含む)
・英会話教室(外部講師をオフィスに招聘したオーダーメイド語学学習)
・月一程度の勉強会(直面する事業課題をピックアップしゼミ方式で議論するともに、経営陣よりビジネス知識をインプット)
まとめ
- ジョブホッピングが当たり前の国というのは、基本、売り手市場であり、短いスパンで人材育成メニューを策定してく必要がある。
- そういった国では若年層が多く、もっと豊かになりたいという成長意欲に溢れている傾向があるので、その意欲に応える人材育成策を実施する。
- 上述における人材育成策は、従業員満足度を高めるための福利厚生策、人材繋ぎ止め策の一面がある。