前編では与信判断についてお話しました。後編では、与信を出すと(掛け売りすると)判断した後、どのようにして管理をしていくべきなのか解説したいと思います。
なるべく与信額は小さくサイトは短めに取引を開始
初回の与信判断は難しく勇気がいることですが、取引を開始して初回の支払日に入金があったらそれで終了ということにはなりません。むしろ、回収リスクはその後、取引が続く限り続いていくことになります。それでは、どのように与信管理を行っていくべきなのでしょうか。
信用情報が確認できる大企業でない限り、取引数量は少しずつ(与信額は少なく)、サイト(売掛債権期間)はできる限り短くして取引を開始します。一定期間を経過しても支払に滞りがなければ、与信額を上げ、顧客から要望があれば是々非々でサイトを長くしていきます。
債権残高は日々把握
国によって商慣習が異なるため一概には言えませんが、日本のように末締め翌末払いではなく、納入30日後決済というパターンもあります。
末締め翌末払いだと、1~2か月とサイトにレンジができてしまいますが、納入30日後だと、どの納入も同じサイトになるメリットがある一方で、支払が納入頻度と同じ回数分起こるため、支払側の送金手続き煩雑になるだけでなく、受取側も照合に手間がかかります。
それでも予定通り支払われば問題ないのですが、顧客によっては頻繁に支払遅延を起こしてしまいます。顧客と連絡を取り、遅れた支払のタイミングを逐一催促して回収すればよいのですが、営業担当者の事の重要性についての認識が不十分であったり、顧客の支払いパフォーマンスが芳しくない場合、あっという間に雪だるま式に債権が溜まる恐れがあります。そうなると、顧客側が一括で払えなくなり、納入の度に支払のロールオーバーが起きてしまい、遅延がエンドレス化してしまうことが起こりえます。
こういった事態にならないよう、担当者への与信管理の重要性を日々説くと共に、報酬にも回収パフォーマンスを反映させます。会社によっては、回収業務は営業ではなく経理等の仕事というパターンもありますが、筆者は、営業は売ってお終いではなく、債権回収するまでが仕事だと考えているので、与信判断から回収までが営業の業務であると捉えています。
支払遅延を起こしている顧客に対して、取引を継続するか否かを判断をしなければなりませんが、支払遅延が起きたらイコール取引停止ではないと考えます。そもそも、納入後30日という決済条件が支払遅延を誘発しやすいことを理解する必要がありますし、与信行為自体が顧客支援の一部(間接金融)を為しているという現実も直視せざるを得ないからです。
もちろん、回収できなくなったら期待利益ではなく売上高分の現金を失うことになり、取引額が大きければ会社の屋台骨を揺るがしかねなくなるため、上記の判断は大変難しいものになります。一方、郷に入っては郷に従えで、債権の全額回収は絶対条件であるものの、状況をみながら柔軟に対応していく経営判断が求められます。
まとめ
- 与信を出すことを判断したら、基本、取引数量は少しずつ(与信額は少なく)、サイト(売掛債権期間)はできる限り短くして取引を開始する。
- 支払遅延が起きたら直ちに対処しないと、雪だるま式に債権が増大する恐れがある。
- 営業担当には「営業は売ってお終いではなく債権回収するまでが仕事」であることを日々説き、回収のパフォーマンスを報酬にも反映させる。