稼働率を上げるということは、ただ、工場を回せば良いという意味ではありません。稼働率を上げることで何を狙うのかということについては、前回「固定費の回収」であると説明しました。しかしながら、工場を回せば固定費を回収できるのではなく、工場を回すことで売上を立てる、あるいは、売上を立てる(契約を獲得する)ために工場を回し、”利益”を上げて初めて回収できる、ということは言うまでもないでしょう。固定費を回収するための”利益”のことを限界利益と言いますが、詳しく説明していきます。
変動費
変動費とは、売上あるいは稼働率(操業度)に連動して増減する費用のことです。売上が増えれば、それに応じて上昇する費用とは具体的にはどのような費用でしょうか。このブログの写真を見て頂きたいのですが、これはチーズの製造現場です。チーズの原材料は生乳ですが、写真のように、チーズの製造個数が増えれば増えるほど、原料である生乳の調達量も比例して増えていきます。これが変動費です。
変動費には、原材料に加え、外注費、外注人件費(派遣等)、包材費、販売手数料などがあります。
生乳がなければチーズは作れない
原材料がなければ製品は作れない
変動費がなければ売上がたたない
一行ずつ抽象化してみましたが、つまるところ、変動費がなければ、売上がたたず、即ち、利益が稼げず、稼働率は上がらないということになります。つまり、変動費は、売上を作り出すための”原料”でもあるのです。
限界利益
変動費なくして売上は立たないと申し上げましたが、固定費を回収する上で最も大事なことは”利益”です。売上と変動費と利益の関係性について解説します。
売上ー変動費=利益
この構造は説明するまでもないでしょう。
「稼働率上げ固定費を回収する」という文脈において、回収するための利益のことを「限界利益」と呼びます。つまり、
売上ー変動費=限界利益
となります。
固定費の回収点。それが損益分岐点
固定費ー限界利益=0
ゼロになるということは固定費全額を限界利益で回収したということですが、以下の等式に変換できますね。
固定費=限界利益
この均衡点のことを損益分岐点と言います。限界利益の大きさが固定費の大きさと同じになれば、プラスマイナスゼロ、即ち、赤字ではなくなるということです。
限界利益>固定費
となると、その事業は黒字化した、ということになります。
売上から稼ぎ出した限界利益(=売上ー変動費)により、固定費を全額カバーした均衡点(プラスマイナスゼロ)のことを損益分岐点と言います。そして、その限界利益を生み出した売上高のことを損益分岐点売上高と言います。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1-変動比率)
= 固定費 ÷ 限界利益率
まとめ
- 変動費とは、売上あるいは稼働率(操業度)に連動して増減する費用。
- 限界利益=売上ー変動費
- 売上から稼ぎ出した限界利益により、固定費を全額カバーした均衡点が損益分岐点。