前回は、管理会計を駆使した販売計画についてお話しました。今回は、その販売計画を受けて、どのように生産計画と購買計画を作成していくかについて深掘りします。
販売計画から生産計画へ
営業部が提出した販売計画に基づき、製造部が生産計画を立てていきます。その生産計画は、大きく分けて、見込生産の計画と、受注生産の計画に分けられます。
見込生産
販売計画はあくまで計画であり、その通りに注文が入るとは限りません。本当は、注文が入ってから原料を仕入れ、十分な納期を確保してから生産、納入といきたいところですが、そうは問屋が卸しません。
納入日の前日や前々日に注文が入るようなケースの方が多いのではないでしょうか。その場合、見込で生産し在庫を用意しておかなければなりません。汎用性が高い製品であれば、在庫を持っても、いざとなれば売り捌くことができるため、それ程リスクは高くはないでしょう。汎用品でも複数の製品ラインナップがある場合、ロットの切り替えを最小限に抑えるべく(ロット切り替えの待機時間を最短にするため)、効率性を追求(ロットサイズを大きく)していきます。見込なので自社で生産数量をコントロール可能です。
しかしながら、効率性を重視し過ぎて、過剰在庫あるいは過少在庫になったりする事態は回避する必要があります。計画をベースに、営業部、調達部と緊密に連絡を取りつつ、出荷状況を見ながら日々生産調整していきましょう。
受注生産
付加価値品であるが発注数量が少なかったり、ある顧客専用の留め型(付加価値品の一種)などは、受注をしてから生産します。これらも、販売計画に基づき生産計画に組み込みます。一方、受注生産だからといって、原料も受注してから仕入れるようでは、リードタイムが長くなってしまうため、手元に一定の原材料を在庫しておく必要もあります。
生産計画から調達計画へ
製造部は生産計画を立てますが、同時に、原材料を必要数量調達しなければなりません。どの製品にどの原材料をどれだけ調達するかは、製品を開発・設計する商品開発部隊(R&D)の力も借りなければなりません。
最終製品の品質と安全性が担保でき、コストダウンができるのであれば、原材料や調達先を変更する努力を惜しんではなりませんし、市場を広げるため、顧客満足度を向上させるため、新たな商品を開発していく必要もあり、それに伴い、新たな原材料を調達する必要が出てきます。
これらの情報を整理し、原材料別の必要数量と調達時期を取りまとめた計画が購買計画となります。但し、事業年度前に計画したものが寸分の狂いもなく、1年間使い続けられるかというと、そうではなく、販売・出荷状況、品質状況(想定した品質が確保できなければ調達先や原材料を変更)、原材料市況(価格変動によっては調達先や調達国を変更)、製品設計変更(改良を重ねる中で原材料の比率の変更)に応じて、柔軟に調整していく必要があります。
但し、原材料を輸入する場合は、リードタイムが長くなるため、余裕をもった調達計画にする必要があります。さらに、需要(市況)の変化によるタイムラグで、過剰在庫や過少在庫に陥るリスクが高まることから、その対処能力を普段より高めておく必要があります。
また、リードタイムが長いということは、資金の立替期間が長くなります。輸入品は都度買いが難しいのでまとめ買いする必要があり、在庫数量が増し在庫期間も長くなる傾向にあるため、運転資本を増大させます。購買担当は財務担当とマメに連絡を取り合い、しっかりとキャッシュフローをマネージメントしなければなりません。
留意点
販売計画を引き継ぎ生産計画・調達計画に落とし込む一連のプロセスは、毎月レビューを行い、計画と実態のズレを検出し、調整・改善を図っていく必要があります。
機能別組織となり、各部署の成熟度が高まってくると、全体最適から個別最適に陥ってきます。例えば、生産効率重視でロットサイズを大きくしてしまうことで実需と乖離し、過剰在庫が発生してしまう。あるいは、スケールメリットを享受するため購買がまとめて調達することで調達価格を下げようと腐心するあまり、過剰在庫が発生する。あるいは、営業はとにかく量を捌くことを優先し、計画通りの販売から乖離してしまい、原料によって過剰在庫と過少在庫が同時発生するといったことです。
このようなことが起こらぬよう、日常的に部署間の連携・調整を図っていく必要があります。
まとめ
- 生産計画は、大きく分けて、見込生産の計画と、受注生産の計画に分けられる。
- 製造部は生産計画を立てるが、同時に、原材料を必要数量調達しなければならない。どの製品にどの原材料をどれだけ調達するかは、製品を開発・設計する商品開発部隊(R&D)の力も借りる。
- 原材料別の必要数量と必要となる時期を取りまとめた計画が購買計画。原材料を輸入する場合は、リードタイムが長くなるため、余裕をもった計画にする。
- 各部署の成熟度が高まってくると、全体最適から個別最適に陥ってくるので、日常的に部署間の連携・調整を図っていく必要がある。