輸出市場の開拓(新市場開拓戦略)

海外事業の教科書

前回では、競合の攻勢に対する新製品開発戦略の具体的手順について説明しました。今回は、もう一つの競合の攻勢に対する対応策として、新市場開拓戦略について説明したいと思います。

輸出市場のポテンシャル把握

競合の攻勢」では、進出先の周辺国でのポテンシャルについては、FS(事業性調査)を行っている段階から調べておくという話をしました。そうすることで、建設する工場の規模や立地(輸出に適した港湾立地)も進出先の国内市場だけではなく、周辺国への輸出を想定したものになってきます。

周辺国も市場性のポテンシャルが高いことが判れば、近い将来の輸出を想定しておきます。一方、first priorityは進出先の国内市場というのが前提ですので、立ち上げ当初は事業を軌道に乗せるため、国内市場に経営資源を集中させます。

そして、市場浸透が進み、競合との競争が激化し始める前くらいから、輸出の強化を図り事業をdiversify(多様化)させていきます。競合との真っ向勝負をなるべく避け、戦力の消耗を防ぎリスクを分散していきます。

特に、東南アジア・東アジア地域は、周辺国への近接性や成長性、デモグラフィック(人口統計学的な特徴)が類似している国が多く、輸出ビジネスとの親和性が高いので、これらの地域への進出を検討されている場合は、FS段階から輸出ビジネスを念頭に置いていきましょう。

輸出市場の開拓方法

さて、輸出強化の方針は決まったが、どのように市場開拓するのか。まず、輸出ビジネスのネイチャー(特性)から申し上げますと、リードタイムが国内市場以上に必要となり、それを理解してくれる顧客(在庫を多めにもって対応してくれる輸入業者や製造業者)を見つける必要があり、国内市場の顧客開拓より一般的には難易度が上がります。要するに顧客にとって輸入品は国内品に比べて扱いづらい面があるのです。

一方、その扱いづらさを緩和するため輸入機能と卸売機能を併存させた業者はどの国にも大抵いますので、そういった業者を探し当てることがポイントとなります。その探し当て方については定石はないのですが、輸入品を扱っていそうなエンドユーザー(輸入卸売業者やメーカー)をデスクトップリサーチ等で探し当て、アポを取って訪問し、情報を拾っていく必要があります。そういった地道なワークを繰り返していると、自社製品にフィットするユーザーとの接点が出てきますので粘り強く取り組みましょう。

探し当てたら、サンプルワークを繰り返すとともに、市場性が確認できてきたタイミングで、信用できそうな輸入卸売業者とは、必要に応じて代理店契約の可能性も議論していきましょう。中間業者である輸入卸売業者は自社オリジナル商品を探していることが多いので代理店になることを希望してくることがありますし、代理店契約の締結によって動機付けできる可能性があるからです。

一方、gentleman agreement(あえて代理店契約に落とし込まない紳士協定)に留め、まずは様子を見つつ、お互いを束縛しない中で長期的な関係を構築する方法もあります。この方法は、顧客候補が既に競合品を扱っているケースが多いです。また、自社が同一地域で他の顧客との取引がある、あるいは見込める場合も後者のケースになるでしょう。

もう一つのアプローチとしては、日系企業への売り込みです。進出先の国内市場で既に日系企業と関係性ができていれば、周辺国の関係会社の紹介をお願いしたり、デスクトップリサーチで飛び込み営業をかける方法です。ありがたいことに、日系企業で門前払いということはまずないと思いますので、話だけでも聞いてもらえれば突破口が見えてくるのではないでしょうか。

同様に、進出先の国内市場において日系以外の外資系企業と取引があれば、その外資系企業の周辺国の関係会社あるいは本国の本社への紹介をお願いする方法もあります。

輸出ビジネスの醍醐味

地場(輸出市場)へのコネが乏しい中で、日系企業との口座開設は大変ありがたいことですし、その中で、輸出先の企業と口座開設ができたら喜びはひとしおです。自社製品の販売を通じ、言語や文化の異なる国々を訪問し、その国の人たちと交流を持つことは、視野が広がりますし、人生経験としても大切な一ページになるのではないでしょうか。

まとめ

  • 市場浸透が進み、競合との競争が激化し始める前くらいから、輸出の強化を図り事業をdiversify(多様化)させていく。
  • リードタイムが国内市場以上に必要となり、それを理解してくれる顧客(在庫を多めにもって対応してくれる輸入業者や製造業者)を見つける。
  • 顧客(輸入卸売業者)を動機付けする観点から代理店契約を締結するか、紳士協定ベースで長期的関係を構築する方向にするか、柔軟に検討していく。
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