前回は、各組織が個別最適に陥り、オペレーション全体の調和がとれなくなってしまった事態について説明しました。
営業は、付加価値品の販売目標が達成できず、その穴埋めを汎用品の販売増で補填。
製造は、日々の注文に合わせて生産するのみ。原料の余剰と不足が混在する事態が深刻化するまで対応できず。
調達は、製造から修正依頼が入るまで、年初に作成した計画に基づいて調達を継続。
この事態に解決策はあるのでしょうか?
当初計画のズレを、長いリードタイムという制約条件の下、どのように調整していくかがポイントのようですが、まずは、そのヒントになる理論について解説していきます。
かんばん方式
必要なものを必要なときに必要な量だけ作ることをジャストインタイム、それを実現する仕組みのことをかんばん方式と言います。
がんばんと呼ばれる作業支持票を使って、生産指示や運搬指示を行うのですが、注文が入ったら後工程の担当が前工程の担当にかんばんを渡し、前工程にてかんばんに記載された品目・数量を製造します。生産が終了したら、後工程に製品とかんばんを渡し、後工程にて加工を施します。それが終了して新たな注文が入ったら、再び前工程の担当にかんばんを渡します。
このサイクルを上流工程に遡って実施することにより、(一義的には社内の)サプライチェーンがギアを掛け合わすように繋がることで整流化、自動化され、これを繰り返すことによって、余計な在庫が削減され、必要なものを必要なときに必要な量を作れるようになるという理論です。
生産の指示情報が上流工程に遡って伝達されるので、引張方式とも言われます。
かんばん方式の応用
かんばん方式を、冒頭の事態の解決に向けて応用するにはどうしたらよいでしょうか。
販売状況に応じて生産に遡る。
出荷する製品に応じて原料を調達する。
つまり、川下から川上に向かってかんばんを掛け替えるようなサイクルを回していけば、サプライチェーンが整流化され、在庫の保管スペースがなくなるような事態は避けられるのではないでしょうか?
ただし、ここで大きな疑問が生じます。
販売の状況に応じて生産に遡ることはよいのですが、生産に応じて原料を調達することが本当にできるのでしょうか?
生産が必要な原料を調達担当に依頼して、実際に工場に納品されるのが3カ月後だった場合、かんばん方式が成立するでしょうか?
そうです。生産と調達の間におけるリードタイムが非常に長いため、サプライチェーンがタイムリーに繋がらない問題が生じるのです。生産が必要と認識した時点で発注をかけても、到着するのは3カ月後なので、必要な時に間に合わないのです。
この問題をどのように解決したらよいのか。次回、知恵を絞っていきたいと思います。