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合弁契約交渉が事業の趨勢を決める

合弁契約書を締結するためには、当然ながら、合弁相手とその内容を取り決めなければなりません。お互いを支え合う関係になるための契約締結だから、穏やかにフレンドリーに素早く取り進めたいところですが、そうは問屋が卸しません。

それはなぜか?合弁契約書の内容が、株主となる自社にとって、その後の趨勢を決める極めて重要な取り決めだからです。ある意味、条件闘争といっても過言ではないでしょう

交渉にどのような姿勢で臨むべきか?

法律の専門家の助言を得ながら進めることが必要ですが、相手方と1つ1つの条件を決めていくのは、事業の推進者というのが一般的ではないかと思います。専門家は意思決定当事者ではないからです。

従って、交渉当事者は、合弁契約書の内容を詳細にわたり頭に入れ、相手方に配慮しながらも、自社にとって最善の条件を獲得するための交渉力が求められます。条件闘争なわけですから、相手方も必死です。その中で、契約書締結という1つの帰結点を導き出すことは、仕事の醍醐味でもあり、気配りしつつも本音をさらけ出した交渉の暁には、相手方との信頼関係が深まっていくと思います。


自社にとっても、相手にとってもメリットがある。そういうリードの仕方、WIN-WINになるということを相手方に納得してもらいながら取り進めることが、交渉の要諦です。

一方、頭をクールダウンさせる間(ま)を持つということも大事だと思います。交渉担当者であれば、MOUを締結したら、何とかして合弁契約までたどり着きたいと思うものですが、自社にとって、どうしても妥協することができない壁にぶち当たるものです。

壁に当たった時の対処の仕方は?

交渉を前に進めるためには、妥協する必要があるが、その妥協のために一線を越えなければならないという場合、あなたならどうしますか?

そういう時は一旦置いてみる。交渉をサスペンドする勇気が必要です。「相手方も前に進めたいというのは同じなはずだ。自社だけが妥協する必要はないし、結局は長続きしなくなる。どこかに落とし所があるはずだ」と考え直すクールダウンの時間を確保しましょう。そういった間を設けることで、相手方の意識の変化も起こり、突破口を見いだせるかもしれません。

それでも、上手くいかない場合、交渉を白紙に戻す勇気も必要だと思います。それまでの交渉が水の泡になる失望感に一時はさいなまれるかもしれませんが、長い目でみれば自社にとって最善の策をとった、割に合わないリスクを回避したのだと、思い起こす日が来ると思います。

合弁契約書はパートナーとの一番最初の成果物


合弁契約書は、事業パートナーとの最初の成果物です。紆余曲折を経て一緒に成果物を作り上げた充実感は大きいものでしょう。案件次第では、プレスリリースや調印式を行い、お互いの士気を高めます。

一方、これがゴールではありません。交渉の帰結点であることに変わりはありませんが、これから事業を開始する出発点にほかなりません。これから事業パートナーと一緒に長い航海の旅が始まる。どんな旅にしていくのか、次回以降詳しくお話していきたいと思います。

まとめ

  • 交渉当事者は、合弁契約書の内容を詳細にわたり頭に入れ、相手方に配慮しながらも、自社にとって最善の条件を獲得するための交渉力が求められる。
  • 交渉の壁にぶち当たった時は、クールダウンさせる間やサスペンドする勇気も必要。
  • 合弁契約書の締結はゴールではない。出発点である。

この記事を書いた人

中小企業診断士/みなと中小企業診断士事務所 代表(東京都港区)

1994年に総合商社へ入社し、食料分野で30年以上。貿易実務から海外事業経営まで、事業の数字に向き合い続けてきました。駐在はベトナム・メキシコ・アメリカ。ベトナムでは合弁事業会社の副社長として、会社設立から黒字化までを指揮しました。

2013年に中小企業診断士に登録。経営理論とAIの実装を、一人の専門家のなかで往復させる伴走支援を行っています。立派な資料の納品ではなく、現場で回る仕組みを残すことを大切にしています。東京都港区を拠点に、中小企業の経営者と後継者の事業伴走に取り組んでいます。

著書『商社マンの「実録」海外経営ノート』