今回は競合の攻勢に対する新商品開発戦略の具体的手順について説明します。
ニーズの把握
「商品戦略の再構築(新製品開発戦略)前編」では、市場参入後の開発では、マーケットを十分に学習した状態から開発をスタートできるメリットがあると説明しました。築き始めた顧客基盤を活かして、顧客のニーズを反映させる、あるいは顧客と共同で開発することが可能になってくるからです。
開発初期段階における手順としては、営業マンを交えた社内会議で、自社商品の市場における評価や顧客の声(クレーム含む)を共有するところから始めます。競合他社製品の分析と自社製品との比較も行います。その過程で、自社製品の課題感を浮き彫りにしていきます。
自社製品で欠落している商品群はないか、他社と比較して補強する点はないか、といったことを忖度なしで話し合っていきます。一方、営業マンの経験値だけでは情報が不足してくるので、営業マン経由、顧客の意見をヒアリングしに行きます。ヒアリングに際しては、予め、質問リストを用意しておき、それに則った回答を得ることで、MECE感(漏れなくダブりなく)のあるニーズ分析を行います。複数の顧客の声から結論(新製品のコンセプト)を導き出していく帰納法的アプローチとなります。
このアプローチは、いわゆるリーンスタートアップ型の事業開発とは異なりますが、既に、工場を建て(その時点で提供できる製品群は限定されてくる)、市場浸透をある程度果たした上での製品ラインアップの拡充が目的ですので、筆者は前者のアプローチを推奨しています。
試作品(プロトタイプ)の投入
帰納法的アプローチに基づき商品コンセプトを作ります。筆者はここまでが営業部の仕事だと考えています。大企業では、商品企画は開発部隊あるいはマーケティング部隊に属するかもしれませんが、進出からそう時間が経っていないグリーンフィールド事業では、需要サイドに一番近い営業部でその役割を担う方が機動力が上がり、新製品の上市のスピード感と成功確度が高まると考えます。営業部内でマーケティング・商品担当を採用するという方法もアリだと思います。
商品コンセプトが固まったら、価格感(≒コスト感)含めて、開発担当との擦り合わせを行います。営業側はなるべく高品質で低価格という製品開発を求めがちですが、現実はそう甘くはなく、開発担当あるいは製造担当からダメ出しをもらいながら、リアリティーのある、かつ、顧客ニーズを満たす製品を開発していきます。
その上で、プロトタイプ(試作品)を作成し、社内関係者をなるべく多く呼んで品評会を開き、ベストと思えるものを選び、顧客に持ち込み評価してもらいます。営業・開発・製造が力を合わせて開発したプロトタイプが最初から高評価であれば嬉しい限りですが、現実はそう甘くはなく、時に厳しい指摘を受けながら改良を重ねていきます。その上で製品設計を完了させます。
商品化
量産化の見通しを立てつつ、新製品の発表スケジュール(顧客を招聘する新製品発表会等)を策定します。同時に販促物(パンフレットやノベルティグッズ等)も準備します。
そして、大事なこととして、新製品の名称(商品名)を決める必要があります。インパクトのあるものにしたいですが、商品コンセプトとマッチする名称である必要があり、この決定は中々難しいものがあります。従業員からアイデアを募り投票する等、いろいろなやり方を試し、商標登録がなされていないことを確認した上で、関係者が納得のいく名称を決定しましょう。
ポイントは日本人好みの名称が良いとは限らないということです。業界で認知されやすい、あるいは、現地の方々にとって好印象でイメージしやすいことがポイントであり、現地スタッフに前面に立ってもらい「自分たちが名付けた新製品」という納得感を持ってもらうことが、その後の販売促進に好影響を及ぼします。
市場投入
いよいよ、新製品の市場投入のタイミングとなりますが、ここではB2Bを想定しており、大規模な宣伝広告を行うことは前提としません。新製品発表会を開き、顧客に新製品のメリットを体感してもらう、あるいは、サンプル配布する等、継続購入に繋げるための施策を積極的に打っていきましょう。また、営業部としての数量目標を設定し、新規契約に繋げた営業マンの評価に反映していくことも大切です。
このようにして、競合の価格攻勢等に対して、真正面から受けて立つ消耗戦に陥るのではなく、差別化が訴求できる新製品の市場投入により、戦う領域をズラしていくことが自社の耐性を強化することに繋がっていきます。
まとめ
- 開発初期段階における手順は、営業マンを交えた社内会議で、自社商品の市場における評価や顧客の声(クレーム含む)を共有するところから始める。
- 自社製品で欠落している商品群はないか、他社と比較して補強する点はないかを議論した上で、顧客ヒアリングを通じニーズ分析を行う。
- プロトタイプを作成し、顧客に評価してもらいつつ改良を重ねる。
- 新商品の名称を決め、上市のスケジュールを策定する。
- 競合の価格攻勢等に対して、真正面から受けて立つ消耗戦に陥るのではなく、差別化が訴求できる新製品の市場投入により、戦う領域をズラしていくことが自社の耐性を強化する。