製造業の場合、会社設立後のメインイシューは工場建設となります。
立地を決める
まず、立地を決めなければなりません。
事業性調査の段階から、工業団地を複数訪問し、おおよその目途は付けておきます。一方、契約ができるのは、契約主体ができる会社設立後となるので、会社を設立したら、アドミスタッフ(人事系及び経理系)の採用と同時並行で、進出する工業団地を決め契約交渉に入りましょう。
成長市場を求めて大都市に進出する場合、工場の立地は、街の中心に近い方(消費立地)が良いでしょうか?それとも、郊外の方(原料立地 or 港湾立地)が良いのでしょうか?
Pros Consがありますので整理してみます。
消費立地
Pros
・市街地に隣接しているためアクセスが良く販売面で有利
・人材を獲得しやすい
Cons
・地価が高い(第二工場などの拡張性も乏しい)
・市街地であれば近隣住民とのトラブルの蓋然性が高まる
原料立地
Pros
・原材料の調達でコスト面で有利(港湾立地の場合、輸送船を自社工場もしくは付近に着岸させ荷下ろしができる)
・地価が安い(第二工場などの拡張性がある)
Cons
・市街地までアクセスが悪く、完成品の配送が非効率
・人材を獲得しにくい
工業団地選定時に見るべきポイント
- コスト
ROI(Return On Investment)に影響する重要なファクター。安ければ安い程良いという訳ではない。一般的には、工業団地のクォリティー(運営会社のパフォーマンス含む)とコストは比例している。
- アクセス
消費立地か原料立地か。原料立地の場合人材を獲得できるか。市街地から人材を採用する場合(ホワイトカラーの採用は原料立地の工場周辺では一般的には困難)、公共交通機関が未整備であれば、自社による通勤バスの手当が必要になることも留意。その場合、通勤圏内か(1時間以内としたい)。
- 工業団地運営会社の信頼性
民営か公営か。パフォーマンスの違いを考慮。数十年に渡りその工業団地に入居する前提で、運営会社がその期間持ちこたえ続ける財務状態にあるか。環境対策含め法令遵守に抜け漏れがないか。
- 地盤の固さ
高い建物や大型の機械設備を導入する場合、地盤が緩いと地盤沈下のリスクが高まる。工業団地側の説明を鵜呑みにせず、周辺の入居企業への聞き込みや、場合によっては、契約前にパイリングテスト(杭打ち試験)を実施させてもらい、地盤の固さを確かめる。
- 電気、排水設備等のインフラ
周辺への環境対策、進出国によっては停電の頻度等を予め確認しておく。
- 入居企業
進出を検討している工業団地に入居している企業のリストを入手し、自社との共通性や同質性を確認する。特に、日系企業が進出している場合、アポをとって困りごと(インフラ事情、地盤沈下、工業団地運営会社のパフォーマンス、近隣住民とのトラブル、採用状況、労働争議など)がないかヒアリングを行う。
契約
契約締結時には、契約書の内容を必ず専門家に見てもらい、抜け漏れがないか確認する。複数の工業団地を比較しコスト等条件面の妥当性も検証。
まとめ
- 工場の立地を消費立地にするか原料立地にするか比較衡量の上決める。
- 工業団地選定時には、コスト、アクセス、運営会社の信頼性、地盤、インフラ、入居企業の状況を把握する。
- 工場の立地選定は、その後の事業運営を左右するので(想定通りにならなかった時のリカバリーが難しい)、足で情報を取りにいくことを惜しまず慎重に検討する。