競合の攻勢

海外事業の教科書

前回まで、採用や人材育成についてお話してきましたが、販売・営業の施策について深掘りしていきたいと思います。

このブログでは何度もプロダクトミックスに基づく収益最大化についてお話してきました。「組織を動かす(3)~販売計画と管理会計~」では、市場浸透時には、価格弾力性のある汎用品をメインに販売し、稼働率を押し上げ、限界利益を少しでも多く稼ぎながら、稼働率が上がってくるにつれ、付加価値品の比率を上げていく基本戦略についてお話しました。

価格で攻めたら価格で返される!?

そういった戦略が功を奏し、電光石火の如く、稼働率を上げ市場シェアを上げていくことで、損益分岐点も見えてきたとしましょう。そのまま、付加価値品の比率を上げて、収益率も改善していけばvery bestと言えましょう。

ところが、実際は、それほど想定通りには事は運ばず、市場シェアを取られてしまった競合が取り返しにくることでしょう。価格弾力性を駆使した汎用品中心(ボリュームゾーン)の商品政策の中で、仮に品質差異を謡ったりブランド化を推し進めたとしても、競合が価格を下げてきて、自社のシェアを維持することが難しくなり、価格競争に追従せざるを得ない状況に陥る可能性があります。ボリュームゾーンで市場浸透を図ることの副作用と言えるでしょう。価格で攻めたら価格でやり返されてしまうのです。

本当の意味での競争が始まる

筆者は上述のような競合の攻勢が始まってからが、本当の競争の始まりだと考えます。競合が自社を脅威に感じてきたからこその切り返しなのです。相手も価格を下げることは芳しいとは思っていないはずであり、双方がこの状態から脱却し生き残ることができるのか、経営手腕が問われる局面なのです。

当然のことながら、いつまでも値下げに追従していれば、体力の限界が訪れます。一方、値下げ攻勢に何も策を打たず、それまでのやり方を維持しているだけでは、市場シェアを失うことになるでしょう。

ではどうすればよいのでしょうか?

製品戦略の再構築(新製品開発戦略)

「新製品開発戦略」

どこかで聞き覚えのあるワーディングではないでしょうか。実は、2番目に発信した「どういう新規ビジネスが合弁事業に適しているのか?」で解説したアンゾフの成長ベクトル論における「既存市場」x「新製品」の組み合わせで勝負する戦略となります。

元々、新規事業を検討する際のフレームワークでしたが、競合からの切り返しにどう対応するかを検討する上も再利用できるのです。詳細は次号で説明します。

輸出市場の開拓(新市場開拓戦略)

アンゾフの成長ベクトル論を活用した競合からの切り返し対策のもう一つの一手が、輸出市場の開拓です。進出国の市場だけで勝負することが全てと考える必要はありません。周辺国でのポテンシャルについては、FS(事業性調査)を行っている段階から調べておきます。

事業立ち上げ当初から多方面(他国)へ売り込みは、販売力が分散してしまい得策ではありませんが、市場浸透がある程度までくれば、その中(「既存市場」x「既存製品」)でひたすら戦い続けるより、新市場(「既存製品」x「新市場」)に打って出た方が、戦力の摩耗を防ぎリスクを分散することにもなり、事業を盤石なものにしていくことに繋がるでしょう。

まとめ

  • ボリュームゾーンで市場浸透を図ると、軌道に乗ってくるくらいのタイミングで競合の切り返しが始まる。
  • 競合の攻勢が始まってからが、本当の競争の始まり。競合が自社を脅威に感じてきたからこその切り返しと言える。
  • 競合の攻勢は、単に勝ち負けを決める事態ではなく、対応次第で、自社を強くするための機会になる。追い込まれることで、中々手を付けられなかった施策の実行でブレークスルーし、次の成長フェーズに駆け上がっていくきっかけになる。
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