組織を動かす(2)~販売計画の基本~

海外事業の教科書

どの製品をどれだけ販売し、利益を最大化するかというプロダクトミックスが見えてくると、そのベストミックスのために、組織をどのように機能的に動かしていくかというところにフォーカスしていかなければなりません

方向性が見えたので、あとは、経営者が組織の「操縦かん」をどう握るかにかかってきます。一方、そもそも論として、ベストミックスは見えたが、どの部署がその先頭を走るのでしょうか?

営業でしょうか?製造でしょうか?管理でしょうか?あるいは購買(原料調達)でしょうか?

各々の部署が連携する必要があることはイメージできますが、ベストミックス実現のための先導役や調整役はどの部署が担うのかについて、解説していきたいと思います。

出発点は事業計画(予算)

どの部署が何から始めるという話の前に、まずは会社としての事業計画(予算)なくして、定量的な目標設定は難しいということです。ただ、漫然と作って売って、ということにはならないでしょう。事業年度が始まる前に予算の策定に入る必要があります。

一般論として、各部署が販売計画(売上・利益目標)、生産計画、購買計画を立てていきます。一方、起点が必要となりますので、営業部が、どの顧客に何をどれくらい販売するかのブレークダウンを作成していきます。

管理会計に基づき顧客別・製品別の販売計画を作る

各担当が顧客が購入するであろう製品と数量の予測を立て、その積み上げで営業部全体の予算を形作って行くわけですが、必要に応じて経営陣が各担当長とのヒアリングを通じて、無理のない範囲でストレッチ(目標値の切り上げ)をかけていきます。予測から目標への変換プロセスです。

「無理のない範囲」というのがポイントで、高過ぎる目標を押し付けても、担当のモチベーションを下げることにもなりますし、会社全体の予算と連動していることから、後述する生産計画や購買計画に悪影響を及ぼしかねません。端的に言うと、無理な計画は過剰在庫の温床になります。

また、管理会計を導入することによって、単なる顧客別の販売数量目標ではなく利益目標が立てられるようになります。稼働率や市場性という制約の中、どの製品をどれだけ販売すると利益を最大化できるかというプロダクトミックスが見えていれば、担当者からの積み上がってきた計画を定量的かつ公平にチェックできるようになります。もちろん、担当者が計画を作る前に、経営陣がプロダクトミックスを前提にした計画を策定するようきちんと説明・先導することが大事です。

担当者に管理会計のロジックを落とし込む必要があるか否かはケースバイケースです。自分の担当顧客の収益性を確認しながら会社への貢献度を可視化したいという担当もいれば、採算云々の前に新規顧客開拓に専念すべきと考える担当もいることでしょう。従って、筆者は、少なくても営業部の担当長(課長クラス)までは、販売数量だけではなく、プロダクトミックスに基づく収益(利益)のコミットメントを求める必要があると考えます。

企業によっては、数量目標(or売上目標)だけで十分というところもあるでしょう。しかしながら、新規事業の立ち上げは、事業の継続がかかっており(順調に立ち上がらなければ早々に撤退です)、いち早く損益分岐点まで引き上げる必要があり、そのために、売上(数量)だけではなく、収益性の把握も必要となります。

組織が数量目標だけの把握に陥ると、利益率の高いものをたくさん売るというプロダクトミックスの大前提がないがしろになる恐れがあります。当然のことながら、ただたくさん売るより、利益率が高いものをたくさん売る方が難しいのです。イージーな方に会社が流れていかないように手綱を締めるのも経営者としての大事な役割だと思います。あとは、組織メンバーへの落とし込み方であり、どのレイヤーまで落とし込むかは、経営陣の判断ということになるでしょう。

おさらいになりますが、「限界利益≧固定費」となる損益分岐点までの最短ルートがベストミックスであり、それを反映した計画がルートの出発点になることを肝に銘じておきましょう。

まとめ

  • 事業年度が始まる前に事業計画(予算)を作成する。まず、営業部が販売計画を作成し、売上(販売単価x数量)と利益の目標設定を行う。
  • 利益の目標設定のためには管理会計の導入が必要。
  • 単なる予測から目標に切り替えるためにストレッチする必要はあるが、やり過ぎは禁物。
  • いち早く損益分岐点に達するには、売上・数量目標では不十分。ただ、たくさん売るより、利益率が高いものをたくさん売る方が難しい。
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