海外事業における与信管理 前編

海外事業の教科書

今回は与信管理についてお話します。日本におけるB2Bビジネスでは掛け売りが一般的な決済形態ですが、海外ではどうなっているのでしょうか?

海外でもB2Bでは掛け売りが一般的

仮に、日本と同様、進出国では掛け売りが一般的だったとして、「商習慣なのだから他に選択肢はない」と盲目的に追従して大丈夫なのでしょうか?

日本から輸出する場合では、L/Cのような債権保全策が検討できますし、相手国の輸入者が貿易に慣れていれば、比較的受け入れられやすいでしょう。

しかしながら、進出先の国内市場で、L/Cのような万国共通的な債権保全手段は、日本国内の市場がそうであるように「ない」というのが現実でしょう。

それでは、どのようにして債権保全策を図ればよいのでしょうか?

まずは、日本の商習慣を想像してください。日本で一番確実な債権保全手段は前金でしょう。先にお金を払ってもらってから商品を引き渡すことですが、この取引ができるのは、基本、売り手が比較的大きな企業で、買い手が小規模で、かつ、商品はその大きな企業でしか供給できないといったように、売り手の力が比較的強い場合にのみ成立する決済形態と言えるでしょう。

決済条件もある意味競争なわけですから、売り手が複数存在し力が均衡していれば、掛け売りによって、顧客利便性を高める競争が起きるので、B2Bでは掛け売りが一般化しているのだと思います。

だとすると、進出先の国内市場も同じと考えられ、自社だけが前金やデポジットを提示すれば、顧客獲得はおぼつかなくなり、事業は成立しにくくなるでしょう。

つまり、進出先の国内市場でB2Bビジネスを行うということは、その市場の商習慣(掛け売り)に従わないという選択肢は現実的には取りづらいのです。

進出先で債権保全策はあるのか?

進出先で、掛け売りせざるを得ない場合の債権保全策はあるのでしょうか?

筆者は、日々の与信管理をしっかり行う以外にないと考えます。

それでは、与信判断や管理を行う上での情報源となる信用調書は入手できるのでしょうか?

残念ながら、相手先比較的が大きな企業でない限り手に入りにくいですし、大きな企業であっても、十分な情報は中々入らないというのが現状だと思います。

十分な信用情報がない中で、どのように与信判断をするのでしょうか?

相手の財務状態がわからないのに、掛け売りの判断をするというのは、霧の中で運転するような不安感に襲われますし、本来的には取引を行うべきではないとも言えるでしょう。

与信判断方法

与信の判断方法は、足で稼いだ情報で複合的に判断していくことになります。

業界経験者を採用する

業界経験者採用できれば、その人物が担当として掛け売りをしていた取引先で、その取引先の支払いが問題ないということが確認できれば、与信判断がしやすくなります。これは、ある意味、採用した人物への信用ということにもなります。販売与信は、どちらにしても(取引先の経営者にしても従業員にしても)最終的にはヒトへの信用判断ということも言えるのではないでしょうか。

積極的な顧客訪問

顧客を訪問し、その会社やオーナーが信用に足るかを判断することはもちろんのこと、オフィスの調度品や雰囲気などを感じ取っていきます。もし、倉庫内や倉庫への荷下ろしが見れるのであれば、どのような競合品が入ってきているかも見れるかもしれません。競合品が確認できれば、その競合が与信を出している可能性があると判断できます。詮索するようにギョロギョロ見回すのはNGですが、顧客訪問を通じて視界に入る情報の多くが与信判断の材料になることを肝に銘じておきましょう。

まとめ

  • 海外事業での債権保全策は、基本、日々の与信管理をしっかり行う以外にない。
  • 与信の判断方法は、足で稼いだ情報で複合的に判断していくが、業界経験者の採用や積極的な顧客訪問で精度を上げていく。
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