正直に申し上げると、AIエージェントが作る成果物の完成度は、現状7〜8割だと感じています。残りの2〜3割は、期待と違うものが出てきます。ここで見限るか、育てるか。分かれ道はここにあります。
私のやり方は単純です。出てきた成果物に、ダメ出しを入れる。「この表現はうちでは使わない」「この数字の根拠を残して」「ここは先方に失礼だ」。そのダメ出しを、AIエージェントへの指示書に書き足していきます。指示書といっても、特別なものではありません。CLAUDE.mdという名前の、ただのテキストファイルです。AIエージェントは業務を始める前に必ずこのファイルを読むので、翌日には昨日の指摘が反映された成果物が出てきます。同じ間違いを、二度しなくなるのです。
専門業務に特化したシステムでは、現場と情報システム部門、さらに開発会社の連携が難題でした。現場は業務を知っているが、システムの作り方は分からない。技術側はシステムを作れるが、現場の細かな判断までは分からない。要望を伝え、技術者が設計へ翻訳し、完成品を現場へ戻す。その往復で認識がずれ、直すたびに時間と費用がかかっていました。
AIエージェントは、この距離を縮めます。現場の本人が業務の言葉で直接指示し、成果物を試し、その場で直し方を伝えられるからです。プログラムを書けなくても、必要な機能を決め、検証し、改善するという意味では、利用者自身が「システム開発者」になります。要望から改善までを同じ人が実質的にゼロコストで回せるため、伝言によるずれや「導入したのに使われない」という事態も起こりにくいと、私は考えています。
お気づきでしょうか。これは、部下の育成と同じ構造です。業務を任せ、結果を確認し、ダメ出しをし、次はもう少し大きく任せる。違いは、AIエージェントは指摘を忘れないことと、翌日には直っていることくらいです。私は自分の事務所のAIエージェントたちを、分身とも部下とも呼んでいますが、実感としては「教えたことを確実に覚える新人」が一番近いと思っています。
だからこそ、最初の出来栄えだけで判断しないでいただきたいのです。導入した初日のAIエージェントは、入社した初日の新人です。会社の事情も、御社の言葉遣いも、まだ何も知りません。3か月分のダメ出しが指示書に積み上がったAIエージェントは、初日とは別物になります。そしてその指示書は、御社の業務の勘所を言葉にした、それ自体が資産です。
人を育てるように、AIエージェントを育てる。これがAIエージェント運用の本質だと私は考えています。非エンジニアでも、日々のダメ出しを通じてAIエージェントを改善し、自分の業務に合うよう運用できるのです。では、育て上がったAIエージェントがロングテール業務を引き受けたとき、人の時間は何に使われるべきなのか。次回は、有名な2対8の法則の話をします。
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月に一度だけ作る資料。取引先ごとに書式が違う書類。たまに発生する問い合わせへの対応。複数のファイルから数字を集めて作る報告書——。
一つひとつは小さくても、種類が多く、会社全体では大きな時間を使っている。けれど、従来のシステムでは採算が合わず、人の手と記憶に残されてきた。こうした仕事を、みなとでは「ロングテール業務」と呼んでいます。
AIエージェントの登場によって、この領域も自動化できるようになってきました。
みなとは、単にAIツールを紹介するのではありません。御社の業務を棚卸しし、人が判断すべき仕事とAIに任せられる仕事を分け、まずは一つの業務から小さく試します。試作、検証、運用設計を重ねながら、現場で使い続けられる仕組みを一緒に組み上げます。
目指すのは、単に仕事を速くすることではありません。AIに任せられる作業を移し、経営者や社員の時間を、顧客対応、提案、人材育成、新しい事業など、会社を前へ進める仕事へ戻すことです。
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