ある企業にお勤めの方から、こんな本音を聞くことがあります。
「AIエージェントで業務を早く終わらせると、暇に見えて微妙な感じになるかもしれない。それなら今まで通りのやり方で、残業している方が評価を落とすことはないのではないか。」
ある社員がAIエージェントを使いこなし、5人分のタスクを定時内に終えたとします。この人は称賛されるでしょうか。それとも「余裕があるなら」と、さらなるタスクを頼まれてしまうでしょうか。
人事評価の仕組みがAIエージェントの活用を前提に設計されていない会社では、頑張った人が損をするかもしれない可能性を、完全には排除しきれていないのではないでしょうか。すると社員には、ほどほどに使う、つまり手加減するという合理的な選択が生まれてもおかしくはありません。
もう一つの壁は、ツールの制約です。会社公認のAIしか使えず、その性能が最新のものに追いついていない。最近は性能が向上してきているものの、相談しても微妙にピンボケした答えしかが返ってこない経験から、「AIは使えない」という印象が社内に残ったままになっている。
ようやくAIエージェントの利用が、一部の企業でも認められ始めた。それが現在地ではないかと感じています。労使関係や「これまでのやり方」という慣性から、組織をすぐに作り替えることも容易ではないでしょう。だからAI導入は、小出しになりがちで、業務効率化の範囲にとどまりやすく、その効率化すら評価制度と衝突しかねない。これが多くの企業で抱えるジレンマではないでしょうか。
AIエージェント時代の特徴は、会社が大規模なシステムを導入するのを待たなくても、各人が自分のタスクを自ら設計し、自動化できることです。
情報システム部門がすべてのAIエージェントを作る必要はありません。情報管理、利用できるサービス、アカウントや権限の範囲といった安全面のルールを情報システム部門が整え、その範囲の中で、業務を知る現場がAIエージェントを設計し、育てる。AIエージェントが両者の間をつなぐことで、現場と情報システム部門の役割分担そのものが変わる可能性があります。
一方で、社員の側が先に進み、会社の評価制度や運用ルールが後から追いかける逆転現象も起こり得ます。最新ツールを導入しても、その成果を正当に評価できなければ、組織全体の変化にはつながりにくいでしょう。
これに対して、スタートアップや個人事業主は、この迷いが少ないと考えられます。使えば使うほど成果と収入に直結するからです。隣の競合も同じツールを使いこなしているとなれば、全力で使う以外の選択肢がありません。少人数のまま大企業の領域で存在感を高める会社は、これからますます増えていくかもしれません。
規模の大きさが必ずしも強みにならない時代が、静かに始まっている可能性があります。この構図、実は筆者の30年超の社会人経験上、見覚えがある景色でもあります。次回、最終回は30年前の話から始めます。
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AIエージェントの登場によって、この領域も自動化できるようになってきました。
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