木島は、AIディレクション力の体系化にひとつの区切りをつけた。
前回までに整理した構造はこうだ。縦軸に専門知識と経験値、横軸にリベラルアーツ。この二つが交差する点で、最も深いAIとの対話が生まれる。そしてAIディレクション力の核心には、論理的思考力、監督力、目利き力という三つの能力がある。
しかし、木島には一つの懸念があった。
講座で「AIディレクション力」と語っても、受講者からすれば観念的な話に聞こえるのではないか。概念としては理解できても、では目の前の仕事にどう使うのか。そのインターフェースの部分が曖昧なままでは、伝わるものも伝わらない。
だからこそ、AIディレクション力を持って何ができるのかを、具体的に示す責務がある。木島はそう考えた。
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最初に取り組んだのは、自分自身の棚卸しだった。
過去半年間、AIを使って何をやってきたのか。それを改めて分析してみる必要がある。
方法はすぐに思いついた。AIには過去の対話履歴が残っている。最も多く使っているGenSparkやGemini、そして直近で使用頻度が増えているClaude。これらのツールに残された履歴を遡れば、自分が実際に何をしてきたかが見えてくるはずだ。
もちろん、すべての対話内容をコピーして精査するのは現実的ではない。だが、各セッションにはタイトルが残っている。そのタイトルは、木島がAIに何を依頼したかの要約になっている。
木島はそのタイトルをすべて抽出し、AIに読み込ませて分析させた。
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結果は、予想以上に明快だった。
半年間で木島がこなしたタスクは、239件。一日あたり一件から二件のペースで、AIと協働していた計算になる。
内訳を見ていくと、最も多かったのは教育・人材育成の分野だった。239タスクのうち72件、全体の約30%を占める。講座の準備、コンテンツ作成、スライド制作、Q&A資料の整備、ケーススタディの開発。木島の副業の柱である講座運営に、AIは深く関わっていた。
次に多かったのは専門コンサルティングで44タスク。経営診断、業務システム導入支援、M&A案件の初期調査、業界動向レポートの作成。経営支援に直結する領域だ。
三番目は情報発信・出版で30タスク、全体の約13%。SNSのブログ、ホームページのコンテンツ、Kindle本の執筆、スキルシェアプラットフォームの紹介ページ。発信活動の裏側で、AIは常に稼働していた。
四番目は経営・財務管理で24タスク、約10%。顧客獲得戦略の立案、財務分析、税務の最適化など、木島経営支援パートナーズの経営に関わるタスクだ。
そのほかにも、キャリアデザイン、趣味や生活に関するタスクが続いた。
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木島は239のタスクを眺めながら、ふと思った。
これをもう少し体系化できないか。
個別のタスクは確かに多岐にわたる。だが、その奥に何か共通する構造があるのではないか。受講者に伝えるべきは、個々のタスクの羅列ではない。タスクの背後にある、より普遍的なパターンのはずだ。
木島は、分析の第二段階に進むことを決めた。
239という数字は、出発点に過ぎない。その先にある構造を見つけ出すこと。それが次の課題だった。
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※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業等とは一切関係ありません。
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💡 AI実装メモ ——「木島経営支援パートナーズ」の実践指針——
履歴は資産である: AIとの対話履歴は、単なるログではない。自分が何をしてきたかを振り返る「鏡」であり、体系化の出発点になる。
分類はAIに任せ、解釈は人間が行う: 239タスクの分類作業はAIが得意とする領域だ。だが、その分類結果から何を読み取るかは、人間の仕事である。
具体から抽象へ、そして再び具体へ: 個別のタスクを抽象化してパターンを見出す。そのパターンを、別の具体的な場面に応用する。
棚卸しは定期的に行う: 半年に一度、自分のAI活用を振り返る習慣を持つ。何に使っていたか、何に使えていなかったかが見えてくる。
数字は説得力を持つ: 「たくさん使った」ではなく「239タスク」。定量化することで、自分の実践が客観的に見えるようになる。
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作者からのメッセージ
第15回では、木島が自分自身のAI活用を「棚卸し」する場面を描きました。
AIを使い始めると、日々の作業に追われて、全体像を見失いがちです。しかし、履歴を振り返ることで、自分が何をしてきたか、何が得意で何が手薄かが見えてきます。
「239タスク」という数字は、木島の半年間の実践の結果です。この数字を出発点に、次回以降、AI活用の「モジュール」という概念を深掘りしていきます。
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