FS(事業性調査)は新規事業の成功確度を上げるためのステップ

海外事業の教科書

FS(事業性調査)とは?

今回は、FS(Feasibility Study)についてお話します。
一般的には、FSと言われるもので、文字通り新規事業の事業性を調査することを意味します。

なぜFSを実施する必要があるかというと、市場性やリスクを進出前に洗い出すことで成功確度を上げるためです。仮に、進出先の経済状況、購買力、賃金体系、労使環境、法律や規制、業界環境(市場規模、成長性、競合)、等々を調べないで進出してしまったら、何が起こってしまうかということを想像すれば、その重要性は火を見るよりも明らかでしょう。

FSは大きく分けて、海外進出の場合は特に必須となる社会経済等のマクロ環境分析、事業採算や業界環境を把握するミクロ環境分析に分けられます

前者はデスクトップリサーチである程度まで対応可能ですが、後者は現地訪問によるヒアリングが必要になってきます。また、業法などは、海外の場合はその確認が難しく、外部専門家による調査が必要となる場合があります。

マクロ環境分析

マクロ環境分析の主な対象は以下となります。海外進出を検討される場合は、しっかり分析しましょう。コストをかけずにデスクトップリサーチや書籍等で多くをカバーできるので、進出前に調べ尽くすことにこしたことはありません。漠然としたわからないことへの不安解消にもなると思います。

また、進出してから(資金を拠出してから)、「こんなはずでなかった」が、ミクロ環境に起因するのであれば、やってみないと分からないということもありますし、ある程度はやむを得ない面はあると思います。しかしながら、マクロ環境に起因するのであれば、その事前不足を後悔することにも繋がります。転ばぬ先の杖として調べ尽くしておくことをお薦めします。

気候・民族・言語・人口・歴史・宗教・文化・教育制度・治安
政治制度
日本との関係
経済規模
産業構造
貿易主要品目
国際収支
貿易規制
経済政策
外資奨励政策/外資規制
金融制度・為替管理制度
GDP・経済成長率・インフレ率
所得分布
行政機構
税制
環境規制
労働政策
労働関係法(雇用制度・規制)
労働条件
労使関係
労働意欲と定着度
失業率

ミクロ環境

ミクロ環境分析の主な対象は以下となります。ミクロ環境分析は、進出する事業領域周辺の環境分析となります。まずは、進出先の市場性が重要になるでしょう。想定する製品やサービスに一定の需要があり成長余地があるのか、あらゆる角度から調査しましょう。外部の調査会社を起用することも一つの方法です。

しかしながら、筆者の経験上、ミクロ環境分析はマクロ環境分析と異なり、事前に調べたとしても、進出後に初めて認識する情報(商取引習慣、ユーザー特性等)が多々あることも事実です。業界のインサイダーにならなければ掴めないような情報が多々あるからです

その際、「事前の想定と違った」と感じることもあるでしょう。そこをどう乗り越え、適合していくかが腕の見せ所になると思います。進出後、巡航速度に入るまで「適応力」「順応力」が何度も問われる局面が続きます。

一方、業法・関連法規等は、業界特有なものであっても、事前に調査することは可能です。進出国によっては、その法と実際の「運用」にギャップがあって、面食らう場面があるかもしれませんが、コンプライアンスに細心の注意を払いながら適正に対応していく柔軟性も求められてきます。

市場(業界)規模・需要
市場(業界)の成長性
商取引慣行
競合分析
ユーザー(消費者)特性・購買行動
会社法
業法・関連法規
知的財産法(特許、商標)
会計・減価償却方法
電力事情
燃料事情
進出立地(土地所有規制等)
資金調達方法
機材調達方法・規制
事業投資計画(採算性等)

まとめ

  • FSではマクロ環境とミクロ環境の両方を分析する必要がある。市場性やリスクを進出前に洗い出すことで成功確度を上げる。
  • マクロ環境分析は進出前に調べ上げ「転ばぬ先の杖」とする。
  • ミクロ環境分析は進出前に調べ上げたとしても、進出後インサイダーになって初めて知ることも多い。面食らうものだが、それをどう乗り越え適合していくかが腕の見せ所。


ブログの更新通知を受け取る

メールにて更新のお知らせをお送りいたします

「更新通知を受け取る」を押したあと、受信ボックスか迷惑メールフォルダを確認して登録手続きを完了してください。

スパムはしません!詳細については、プライバシーポリシーをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました