前編では、パレートの法則、いわゆる2対8の法則を、業務時間に当てはめて考えました。
成果の8割を生む重要な業務は全体の2割なのに、そこへ使える時間も2割ほどしかない。残りの8割は、一つひとつは小さくても、種類が多く、対応に手間のかかる「その他大勢」の業務へ使われています。この連載では、この8割の時間を奪う側をロングテール業務と呼んできました。
会社の将来を考える。大切な顧客へ新しい提案をする。人を育てる。本来はこちらへ時間を使いたいのに、書類の作成、情報の転記、資料の取りまとめ、細かな確認に追われてしまう。AIエージェントでロングテール業務を減らす目的は、この時間配分を逆転させることにあります。
その第一歩が、業務を「入力・加工・出力」に分け、繰り返し使えるワークフローとしてAIエージェントへ引き渡す方法でした。月次の集計、定期的な調査、決まった書式の資料作成などは、一度流れを作れば、同じ手順を繰り返せます。
しかし、8割の時間を使っているロングテール業務のすべてが、繰り返しのワークフローになるわけではありません。
顧客から相談を受け、急きょ提案資料を作る。上司から頼まれ、初めてのテーマで報告書をまとめる。予定外の会議が入り、論点と資料をそろえる。トラブルが起き、経緯と対応案を整理する。
こうしたスポット業務にも、その都度、入力・加工・出力はあります。ただし、次に同じ依頼が来るとは限らず、来たとしても条件が違います。入力する情報も、考える順番も、求められる成果物も変わるため、同じ流れを繰り返す定型ワークフローとして先に組んでおくことが難しいのです。
したがって、入力・加工・出力のワークフローをAIエージェント化するだけでは、8割の時間を使っているロングテール業務を、すべてカバーできません。定型化できる部分を移した後にも、繰り返さないスポット業務が残ります。
では、人はなぜ、その場ごとに条件が違う業務へ対応できるのでしょうか。
初めての依頼に見えても、私たちは過去の経験を無意識に参照しています。
この顧客は、どこまで説明すれば納得するのか。以前の提案で、何を評価してくれたのか。社内では、どの数字を根拠として示す必要があるのか。似た案件で、どんな判断をしたのか。
こうした文脈が頭の中にあるから、その場に合った進め方を組み立てられます。逆に、一般的な知識しか持たないAIへ「提案書を作って」と頼んでも、どこかで見たような内容になりやすい。AIが賢くても、こちらの過去を知らないからです。
繰り返す業務に必要なのが、流れを定めた「手順書」だとすれば、繰り返さないスポット業務に必要なのは、今回の進め方を考えるための「文脈」です。
そこで使うのが、第二の脳です。顧客との経緯、過去の提案、判断した理由、成果物、修正履歴を、AIが探して使える形で残しておく。AIエージェントは、その中から今回に関係する記録を探し、条件に合わせて、その都度進め方を組み立てます。
第二の脳は、すべてのスポット業務を無理に同じ型へ押し込むものではありません。繰り返しのワークフローを作れない業務でも、過去の文脈をAIエージェントへ渡し、今回に合う対応を考えさせるための土台です。
入力・加工・出力の定型ワークフローから、文脈を使って対応するスポット業務へ。第二の脳によって、ロングテール業務のAIエージェント化は、次の段階へ進みます。
次回は、第二の脳とは何かを、特別な技術の話ではなく「AIに過去の自分を渡す」という視点からお話しします。
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御社の「小さく、多く、面倒な仕事」を、一度棚卸ししてみませんか。
月に一度だけ作る資料。取引先ごとに書式が違う書類。たまに発生する問い合わせへの対応。複数のファイルから数字を集めて作る報告書——。
一つひとつは小さくても、種類が多く、会社全体では大きな時間を使っている。けれど、従来のシステムでは採算が合わず、人の手と記憶に残されてきた。こうした仕事を、みなとでは「ロングテール業務」と呼んでいます。
AIエージェントの登場によって、この領域も自動化できるようになってきました。
みなとは、単にAIツールを紹介するのではありません。御社の業務を棚卸しし、人が判断すべき仕事とAIに任せられる仕事を分け、まずは一つの業務から小さく試します。試作、検証、運用設計を重ねながら、現場で使い続けられる仕組みを一緒に組み上げます。
目指すのは、単に仕事を速くすることではありません。AIに任せられる作業を移し、経営者や社員の時間を、顧客対応、提案、人材育成、新しい事業など、会社を前へ進める仕事へ戻すことです。
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