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Vol.26|造園業にAIを実装する。〜30%は絶対守ります〜

「30%は絶対守ります」。投資計画の話の途中、アトツギの前原さんは即答しました。

前号Vol.25で、那覇造園土木のミッション・ビジョン・コンセプトが固まりました。ミッションは「沖縄の街と暮らしを、整える」。3行を壁に貼ったところで、次の宿題は事業計画です。本号はその前段、売上2億円を目指す成長の青写真を、投資の中身と戦略の筋で深掘りします。

前原さんが用意してきたのは、2億円までに必要な設備投資が3点というリストでした。ヤード移転費、ユンボ(ショベルカー)、小型ダンプカー。「意外に3点しかないなと思っていた」と本人も仰います。2倍以上の成長を、これらの設備増強で支える計画です。中身は、伐採と、公共工事・造園工事を1対1で組む構成。仕入れがほぼかからない伐採に対し、公共工事は資材を仕入れるぶん売上の幅が大きく取れる。設備が増えなくても売上が伸びる構造です。

問題は、その公共工事と造園工事をどう取りに行くか。ここに「『整える』ための再進出」の意味があります。ミッションの「沖縄の街と暮らしを整える」は、伐採だけで全うできるものではありません。街を整備する公共工事も、地域の住まいに関わる造園工事も、整える事業の射程です。狙いどころは2つ。1つは公共工事の入札。もう1つは、土木会社が元請けで取った仕事の下受けで、相見積もりの際に声をかけてもらえる存在になることです。

実はこれ、前原さんが2年前に一度引いた領域でした。資金回収の長さと安定性の難しさで、伐採に舵を切った経緯があります。それをもう一度やる。アンゾフの成長マトリックスで見ると、既存市場・既存サービスは打率の最も高い領域です。PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)で言えば、一度「負け犬」に置いた事業を「問題児」経由で「花形」に育て直す挑戦になります。沖縄の同業他社が高齢化で力を落としていく中、若手と県外人材を抱えて現場の一戦に立ち続ける那覇造園土木が、その需要を取りに戻るという読みでした。

ここで前原さんが置いた規律が、冒頭の一言です。「30%は絶対守ります」。粗利率30%を下回るなら、入札の場数を増やしても受けに行かない。10回挑戦して1回失敗しても、3回分で取り戻せる計算が成り立ちます。戦略は踏み込み、リスクは規律で囲う。新しいことよりも、一度引いた領域への再進出こそ、規律が要ります。

数字ありに見えた2億円が、アンゾフとPPMで筋が通り、Vol.25で固めたMVCともぶれない位置に着地しました。経営者の「やりたい」は、フレームワークと規律の裏付けがあって初めて、動ける計画になります。次回からは、この投資計画を3年事業計画に落としんでいきます。


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この記事を書いた人

中小企業診断士/みなと中小企業診断士事務所 代表(東京都港区)

1994年に総合商社へ入社し、食料分野で30年以上。貿易実務から海外事業経営まで、事業の数字に向き合い続けてきました。駐在はベトナム・メキシコ・アメリカ。ベトナムでは合弁事業会社の副社長として、会社設立から黒字化までを指揮しました。

2013年に中小企業診断士に登録。経営理論とAIの実装を、一人の専門家のなかで往復させる伴走支援を行っています。立派な資料の納品ではなく、現場で回る仕組みを残すことを大切にしています。東京都港区を拠点に、中小企業の経営者と後継者の事業伴走に取り組んでいます。

著書『商社マンの「実録」海外経営ノート』