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Vol.30|造園業にAIを実装する。〜AIという、ひとりの審査役〜

「もっと時間がかかるものだと思ったんですけど。」那覇造園土木のアトツギ、前原さんが画面ごしにそうおっしゃいました。設備投資が見合うのかを、AIと見極めている最中のことです。

前号まで、私たちは投資計画の中身を詰めてきました。一度引いた領域への再進出と、そこで守る粗利率の規律です。残った宿題は、その投資が元を取れるのかを確かめること。これは、ファイナンス(企業財務)と呼ばれる経営の専門領域です。将来戻ってくるお金を、時間の価値まで含めて評価する考え方です。こうした定量的な見極めを実務に乗せるのは、決して容易ではありませんでした。

私自身、かつてはExcelで、条件を少しずつ変えながら何度も試算を重ねていました。投資採算性において合理的な説明ができるまで、相当な手間がかかります。それをいま、AIがその場で組み立てていく。これだけの作業に時間がかかると見込むのは、ごく自然なことでした。

ただ、AIは計算を肩代わりするだけではありませんでした。放っておくと、AIはこちらに調子を合わせてきます。だからこそ、審査する側の目を持たせる。すると「その前提は、投資が見合うように都合よく置いていないか」と、こちらの読みを押し戻してくる。経営者の「やりたい」に、簡単には賛成しない。その目があるからこそ、出てきた答えを信じられます。

ファイナンスには、採算を測るものさしがいくつもあります。まずは回収期間法。投じたお金を何年で取り戻せるかを見る、最も直感的な方法です。ただ、3年後の100万円と今の100万円を同じ価値として扱う弱点があります。

そこで併せて用いるのがDCF法です。将来のお金を時間の分だけ割り引いて今の価値に直し、元が取れるかを測ります。AIはこの二つを同時に組み立て、さらに投資の規模と収益率という別々の目で採算を確かめます。規模と率は必ずしも一致せず、両方がそろって初めて投資の良し悪しが定まります。

その先に、投資が見合うかどうかを分ける一本の線が現れます。投資が生む収益率が、資金調達コストを上回るか。前原さんが前号で自らに課していた粗利率の規律は、その分岐点を上回っていました。長年の経験と勘で引いた一線に、ファイナンスの裏づけが伴った瞬間です。「これはありがたいですね。」前原さんの声が、ひとつ軽くなりました。

かつては大企業や専門家に委ねることが多かった、ファイナンスに基づく投資判断。その難解な分析を、AIを得て、中小企業がみずから実践できるようになりました。設備投資の判断は、もう経験と勘に頼らなくていい。手元の数字が、背中を押してくれます。


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