「初回で思っていたよりもクオリティが高いです!」初めての6案をお届けした朝、アトツギの前原さんからこんな返信が届きました。Vol.34で要件を固めた発信エージェントが、実際に動き出した日のことです。録音を送ると、翌朝には6案が届く、あの仕組みです。今回は、仕組みを作っていた数日間に決めていたことを1つ、お話しします。
実装に入ってまず向き合ったのは、機能の話ではありませんでした。出来上がる仕組みを、前原さんにどう受け取っていただくか。専用アプリを入れる、新しいチャットツールを覚える。AI導入の相談では、ここで新しい画面を増やす提案をよく見かけます。私は逆に、入口を1つに絞ると決めました。前原さんが普段使っておられる、メール(Gmail)です。
決めた日、前原さんにこうお伝えしました。「届く・選ぶ・教える・送る、の全部がスマホのメールで完結します。新しいツールを覚える必要はありません。」返ってきたのは、「ぜひぜひメール完結型で引き続き宜しくお願い致します。」の一言です。録音を送るのも、翌朝の6案から選ぶのも、直してほしい点を伝えるのも、いつものメール操作のまま。新しい画面も、覚え直す操作もありません。
その分、裏側は私が作り込みました。クラウド上では、Claudeが自分でファイルを読み書きして作業を進める。寝ている間に録音の文字起こしを受け取り、6案に仕立て、朝5時のメールに載せる。その段取りを、この数日間で1つずつ組み上げました。組み方の細部はここでは割愛しますが、方針だけお伝えしておきます。複雑さはすべて裏側に寄せて私が引き受け、前原さんの手元には出しません。
そして、冒頭の返信に戻ります。この朝まで、前原さんに新しい操作をお願いしたことは一度もありません。慣れたメールを開くと、6案が並んでいる。初日は、それだけの朝でした。
中小企業でAIが定着しない一番の壁は、覚えることの多さだと私は考えています。高機能なツールを入れても、開くのが億劫になれば、そこで止まります。入口の簡素さが、続くかどうかを決めます。ただし、慣れたメールの操作のままで、質のいい原稿が出続けるのか。勝負は、ここからでした。
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