初回の6案を配信した、その日の夕方でした。アトツギの前原さんから、最初のダメ出しが返ってきます。「関西弁は基本ナシ。『〜やで』程度の照れ隠しはOK。」AIの書いた案の語尾に、前原さんが普段は使わない言い回しが混じっていたのです。実はこのダメ出しを、私は待っていました。
仕組みを作っている段階で、前原さんにはこうお伝えしてありました。「最初は”惜しいけど何か違う”が多くなります。そこからが本番でして、前原さんのダメ出しを食わせるほど賢くなります。」AIの発信支援は、初回の出来栄えで評価されがちです。ただ、本当の分かれ目は別のところにあります。教えていただいたことが翌朝の案に反映される、学ぶループが回っているかどうかです。
ループはこう回ります。前原さんは夜、届いた6案のメールに、返信で一言添えておくだけ。その返信は夜のうちに、Google Apps Scriptというメールの配達役が自動で回収し、翌朝の生成に織り込まれます。そして翌朝のメールの冒頭には、「きのうの学習メモ」が数行。昨日の指摘をどう決まりとして覚えたかが、そこに書いてあります。教えたことが効いているかを、前原さんが毎朝確かめられる作りです。
前原さんの教えは、翌朝から効き始めました。ご本人らしくない語尾は、翌日の6案から消えています。経営理念作りの案が3つ重なった日には、「MVVネタ案が3つは多いな。せめて2つまでにしてほしい。」という要望が届き、同じテーマは1日2案までという決まりになりました。このメールには続きがあります。「僕自身も録音を多くしますね。」ダメ出しと一緒に、素材を増やす宣言まで返ってくる。教える側に回ると、出す側にも熱が入るのかもしれません。
この往復を重ねた数日後、「ポスト案のクオリティが一段上がった感じを受けてます!」という返信が届きました。ダメ出しは否定ではなく、AIの伸びしろです。Vol.18で「AIという業務委託ライター」のお話をしました。経営者が編集長として最後の一本を選ぶ、あの関係が、夜の一言と翌朝の反映という毎日のループで回り始めています。
一言の返信が、翌朝の6案を変えます。教えるほど、下書きは前原さんご自身の言葉に近づいていく。では、AIはどうやって、言葉の癖や呼吸といった前原さんらしさまで覚えていくのか。その鍵は、前原さんが握っていました。
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