「隠さず出してるのに逆に怪しまれる。この歯がゆさよ。」アトツギの前原さんが、AIの出した下書きを全文書き直した一節です。題材は、見積もりの内訳をどこまで見せるかという話でした。実はこのダメ出しこそ、AIにとって最高の教材になります。
Vol.36でお話しした学ぶループを回すうちに、前原さんのダメ出しには3つの型があると気づきました。決まりを求めるもの。不採用を告げるもの。そして、ご自身で全文を書き直したお手本です。私はこの3つを、別々の形でAIへ反映する設計にしました。決まりは翌朝から必ず守らせ、不採用は同じ筋の案を避けさせる。中でも一番効くのが、お手本でした。
やり方は、元のAI案と前原さんの書き直しを、AIに見比べさせることです。どこを削り、何を足したのか。冒頭の見積もりの投稿なら、AIの案は「だから僕は内訳を全部見せていく方針にしてる。」と説明調でまとめていました。
前原さんの書き直しはその説明を削り、お客さまから月1回ほど聞かれるという「諸経費ってなんなの?」の一言から入って、本音の余韻で締めています。「傑作ポストが完成、採用します。」と、ご本人の手応えも添えられていました。締めの余韻や、具体のひと言から入る呼吸。決まりとして書きにくいものほど、この差分からAIに移っていきます。
新人に筆入れした原稿を、そのまま渡すのに近いやり方です。理由を細かく説明しなくても、直された原稿を見比べれば、書き味は伝わる。部下の企画書や見積書に筆を入れた経験のある方なら、この感覚は近いかもしれません。優秀な新人ほど、お手本から多くを吸収します。AIも同じでした。
お手本は、もう1本あります。経営理念作りを語った投稿で、AIの案は「遅すぎた気もするけど」と、少し弱気な一言で締めていました。前原さんの書き直しは、その迷いを削り、「37期目でようやくこのステージに来たぞ」という宣言で終わります。見積もりの投稿は本音の余韻で、経営理念の投稿は宣言の高揚で。題材ごとに締めを使い分ける感覚まで、AIはお手本から受け取っていきます。
発信をその人らしくするのは、正解の説明ではなく、正解そのものを見せることでした。教える側のひと手間が、AIの精度を決めます。ここまで読んで、気になりませんか。この仕組みが毎朝きちんと動くためには、誰かがパソコンの前にいるのだろうか、と。次回は、その裏側をお見せします。
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