音声で見積もりの質問に答えていく。5分半のデモが終わった時、アトツギの前原さんが口にしたのは想定外の一言でした。「ごめんなさい。ここまで話作ってきて申し訳ないですけど、なんかメモの方がいい感じがすごくしてきました」
見積もり自動化の仕組みを、前回のセッションから設計してきました。現場の立ち合い人がスマホで質問台本に沿って音声で答えるだけで、AIが見積もり書の叩き台を作る。ChatGPTに設計を作らせ、Claude Opus 4.6にセカンドオピニオンをかけ、指摘された曖昧な箇所を一つずつ潰してきた。AIが「ここは前原さんに確認した方がいい」と言ってきた質問リストだけで十数項目ありました。その設計を持ち込んで、初めて実際に声で答えてもらった日です。
答えてみて分かったのは、現場では頭の中で数字を組み立てながらメモに落としていく、という手順があるということでした。音声だと、その組み立ての時間がない。伐採に1.5人、積み込みに0.5人——工種ごとに人員を配分するには、全体を見渡してから数字を割り振る必要があります。瞬発的に声だけで出すものではなかった。前原さんが「違う」と言えたのは、実際にやってみたからです。
方針はその場で切り替えました。音声入力ではなく、スマホ画面で見積もりのフォーマットに沿って入力するアプリ方式へ。定型的な項目はボタンで選び、補足はその場で音声入力もできる。前原さんが普段やっているメモ書きの動きに、そのまま寄せた設計です。
セッションの終盤、前原さんが話してくれたことがあります。「見積もりの数自体も増やそうと思っています。効率化できればですね。ここはちょっと妥協したくないなって今思いました」。処理能力が上がれば、問い合わせを断らずに済む。一度作った設計を変えたことは、後退ではありませんでした。現場の手に合う形を見つけるための、一歩前です。
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