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Vol.25|造園業にAIを実装する。〜250案が、3行になった〜

「整えるの方がしっくり来たって感じですね」。アトツギの前原さんが、画面の前でそうおっしゃいました。

那覇造園土木のミッション・ビジョン・コンセプト(MVC)が、ついに固まりました。Vol.22で3案、Vol.24で250案、そして仮本命だった「沖縄の暮らしをまもる」まで辿り着いていました。けれど「守る」がしっくり来ない。前原さんが宿題として持ち帰り、AIも活用しながら辿り着いた動詞が「整える」でした。

理由は明快でした。「伐採は造園業の王道である『造る』とは違って、取り除いて綺麗にするというニュアンスがある。だから純粋な『造る』でもない。守るか整えるか、『整える』の方がしっくり来た」。動詞ひとつが、伐採と造園という2つの軸を束ねた瞬間でした。

最終形はこうです。

ミッション:「沖縄の街と暮らしを、整える」

ビジョン:「若者がいちばん誇れる造園業」

コンセプト:「ぜんぶ見せる、沖縄の造園業」

Vol.22で参考にした「コンセプトの教科書」の物語の型——「そもそも私たちの企業は◯◯するために生まれた。次に私たちが目指すのは◯◯という未来だ。そのために今、私たちは◯◯をつくる」——に当てはめると、3行がぴたりと一本の物語に通ります。

「そもそも那覇造園土木は、〈沖縄の街と暮らしを、整える〉ために生まれた

次に私たちが目指すのは、〈若者がいちばん誇れる造園業〉という未来だ

そのために今、私たちは〈ぜんぶ見せる、沖縄の造園業〉をつくる」

過去・未来・現在が一筋に並び、会社の意味が線でつながった瞬間でした。

事前にAIから指摘されていた4つのギャップ——公共工事の元受け、循環経済としての薪事業、代表交代の決意、やらないことの明示——も、すべて3行に呑み込まれていました。「整える」は「街を整備する」を含み、「いちばん誇れる」には伐採材を循環させる薪事業が、「ぜんぶ見せる」には代表交代へ向かう経営者の決意が直結します。

最後にひとつ、前原さんが気づきました。「3つ全部に沖縄が入っているのは、多いかもしれません」。県外から仲間を迎え入れている流れがあります。であれば、ビジョンの「沖縄」は外していい。3行は、より軽く、より遠くまで届くようになりました。

「使います。そのまま使います」。前原さんは、壁に貼るとおっしゃいました。MVCは、覚えようとしなくても口から出てくる旗印になっていくでしょう。動詞ひとつで、会社のかたちが定まる。経営の言葉は、磨くほどに短くなります。次回からは、この3行を背骨に、事業計画、その中の投資計画に入ります。


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この記事を書いた人

中小企業診断士/みなと中小企業診断士事務所 代表(東京都港区)

1994年に総合商社へ入社し、食料分野で30年以上。貿易実務から海外事業経営まで、事業の数字に向き合い続けてきました。駐在はベトナム・メキシコ・アメリカ。ベトナムでは合弁事業会社の副社長として、会社設立から黒字化までを指揮しました。

2013年に中小企業診断士に登録。経営理論とAIの実装を、一人の専門家のなかで往復させる伴走支援を行っています。立派な資料の納品ではなく、現場で回る仕組みを残すことを大切にしています。東京都港区を拠点に、中小企業の経営者と後継者の事業伴走に取り組んでいます。

著書『商社マンの「実録」海外経営ノート』